クロス病院

腹腔鏡下胆嚢摘出術について

当院で行っている、良性胆嚢疾患に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術についての説明です。

胆嚢は肝臓の下に張り付く様にある袋状の臓器です。
肝臓で作られた胆汁を蓄え濃縮する働きがあります。
胆汁は特に脂肪分の消化を助ける働きがあり、胆嚢は必要に応じて収縮して、この胆汁を胆汁の流れ道(総胆管)を通して十二指腸へ送り出し食物の消化を助けます。

1.胆石症、胆嚢ポリープについて

胆石症とは

 胆石症とは何らかの理由で胆嚢の機能が低下して胆汁が結晶を作ることにより石(結石)を作ってしまう病気です。
 結石にはいろいろな種類があり、コレステロールを主成分にするものや、ビリルビンを主成分にするもの、それらのまざり合ったもの、カルシウムの沈着をともなうものなどさまざまです。また、胆嚢内だけでなく、総胆管にも結石を認める場合(総胆管結石)もあります。
 胆石のある方でも、無症状で経過する方もいますが、多くの方が症状をあらわします。胆石症の典型的な症状は吐き気や上腹部の痛み、特にみぞおちあたりや右上腹部に痛みや圧迫感を認めることが多く、背中にかけての鈍痛やこった感じ、張りもよく認められます。胆嚢炎がひどくなると腹膜炎をおこし、肝臓に炎症がおよび肝機能障害を併発することもあります。なかには総胆管に落下した結石が原因で急性膵炎という重篤な病気を併発することもあります。

胆嚢ポリープとは

 胆嚢ポリープとは胆嚢の中に隆起した病変(ポリープ)を認める病気です。超音波検査(エコー)の普及で数多く発見されるようになりました。ほとんどの胆嚢ポリープは、コレステロールポリープか腺腫性ポリープと呼ばれる良性のポリープで、これらは小さいものであれば治療の必要はありません。しかし、大きさが10mmをこえると胆嚢癌を認めることがあります。したがって、10mmをこえるポリープや、経過中に大きくなったポリープは危険とされ、胆嚢摘出術が望ましいと考えられています。


2.胆石症の治療法について

 胆石症の治療法には、内科的治療法として結石溶解剤などにより結石を溶かす方法、さらに体外から衝撃波を当てて結石を砕く方法(ESWL)、そして外科的な手術による方法がありますが、それぞれ一長一短があります。

内科的治療

 薬で溶ける可能性のある結石はかなり限られます。溶ける可能性のある結石でもその効果がかなり不確実であるという欠点があります。また、うまく結石が溶けた場合でも結石を作る胆嚢は残るわけですから、結石の再発の可能性は比較的高く、溶解剤を長期間飲み続けなければなりません。

衝撃波による治療(ESWL)

 体外衝撃波により結石を破砕する治療です。この方法は適応になる結石の種類がかなり限られており、病的胆嚢がそのまま残っているため結石の再発率も低くありません。

外科的治療(胆嚢摘出術)

結石とともに胆嚢を切除する方法が胆石症の標準治療として広く世界中で行われています。日本では毎年20万人の胆石症患者さんが胆嚢の摘出術を受けておられます。


3.腹腔鏡下胆嚢摘出術について

 この方法は、臍部に開けた小さな穴からおなかの中に内視鏡(腹腔鏡)を入れ、おなかの中を二酸化炭素でふくらませてテレビモニターを見ながら手術を行います。上腹部に挿入した3本の細いチューブを通して、電気メスやハサミなどを使って、普通の手術と同じように安全に胆嚢を切除します。切除した胆嚢は臍部の小さな傷から取り出します。現在、胆嚢摘出術のうち多くの症例が腹腔鏡手術で行われています。ただし、現在でも以下のような患者さんでは腹腔鏡手術が困難な場合があり、開腹手術をお勧めしたほうがいい場合があります。

a.  胆嚢炎がひどく発熱や白血球の増加を伴う場合(急性胆嚢炎)
b.  くり返す胆嚢炎や腹膜炎を起こしたことにより胆嚢周囲に高度の癒着を認める場合
c.  胃や十二指腸の手術(特に悪性腫瘍に対して)を受けてことがある場合など

もちろん手術に絶対ということはありませんので、手術前の検査で腹腔鏡手術が可能と診断された場合でも、高度な胆嚢の癒着や出血などで内視鏡での手術が不可能となり、開腹による普通の手術に切り替わる可能性もありますので、その可能性については手術前に十分承知していただく必要があります。


4.腹腔鏡下胆嚢摘出術の利点

a.内視鏡手術は前に述べたように、手術による傷がきわめて小さく、
 また、術後の痛みが開腹術に比べて非常に少なく、翌日からどんどん歩けます。
b.手術後の腸の運動の回復が早いので、通常、手術の翌日の午後からは食事ができます。
c.術後順調に経過すれば手術後3日から5日で退院できます。
 職場などへの復帰も開腹手術に比べればはるかに早く可能です。
d.傷が非常に小さいため美容上の利点もあります。


5.胆嚢摘出による影響

胆嚢の役割は胆汁を貯蔵し濃縮することです。胆汁は特に脂肪の消化に欠かせない液です。これは肝臓で作られており、胆嚢は単なるその貯蔵庫です。もちろん胆嚢も1つの臓器ですから、取らずにすむのであればそれにこしたことはありませんが、これがなくなっても胆汁は肝臓で作られていますので、胆汁の分泌には大きな影響はありません。しかし、脂肪分を食べ過ぎた時など胆汁の分泌が追いつかなくて下痢をすることがあるといわれています。


6.総胆管結石の併存している患者さんに対する治療

総胆管結石に対しては内視鏡的乳頭切開術(EST)を行い、極力内視鏡的に排石を試みています。総胆管結石除去後、胆嚢内に結石が残存する患者さんには腹腔鏡下胆嚢摘出術をお勧めします。


7.術後の経過について

 腹腔鏡下手術の場合、術後順調にいけば手術の翌日から食事がはじまり、2~3日でシャワーも浴びられるようになります。手術後3日から退院できます。開腹手術を受けられた多くの方は、手術後1週間から10日程度で退院されます。特に、腹腔鏡手術の場合、退院後すぐに職場復帰されている患者さんも多くいます。

その他ご不明な点がございましたらお気軽に担当医にご相談ください。


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